現在の介護・医療サービス提供体制とその意図:地域包括ケアシステム
医療創生大学 教授 スーディ K. 和代
2000年に介護保険法が制定され、その人の介護必要度合い(支援レベルには2段階、介護が必要なレベルには5段階)に合わせて、妥当な個人負担で自宅や施設で介護サービスを受けることが出来るようになりました。この法律は介護保険活用状況や予算などの観点から3~5年ごとに改定を重ねてきています。 2016年改定では「治す医療」から「治せなくても支える医療」へと明記されました。これは必ずしもすべての病気を治療できなくても、完治しない病があってもその人らしい暮らしを継続できるような支援をする医療という意味です。
国は、病院ではなく自宅や地域で生活をしながらの療養や看取りをさらに促進すべく、2013年に地域包括ケアシステムという新たな考え方を導入しました。国はこのシステムを2025年までに完成させると公表し、関係機関がその方向で動いています。例えば、在宅医療の対象になる人は訪問距離や重症度などで決められますし、自力で通院が可能な人は対象にはなりません。訪問看護師さんはその人の状況に応じて、1日に30分、60分、あるいは15分を3回(服薬の管理や包帯交換など)の計画を立てて訪問します。
仮に急性期病院に入院をしても、病院の担当者は入院時から退院の準備を開始して早期退院を促すように家族や地域の専門職者と連絡を取って、退院の流れを整えます。 また、2018年に大幅な改定があり、新たなルールが複数加わりました。例えば、介護サービスを受ける際の個人負担額もその人の年収による、と変更されました。介護医療院(長期医療と日常生活介護サービスを一体化した施設)という新たなサービスも加わりました。
上述の地域包括ケアシステムの根底にあるものは、人口の高齢化(2019年:約3人にひとりが65歳以上)に伴う医療・介護費などの軽減・抑制です。多くの専門職者【看護師、医師、作業療法士、薬剤師など】や機関(行政、ボランティア、民生委員など)が連携をして、その人が住んでいる地域や自宅での療養・看取りを支援し、人々が可能な限り自立して暮らしながら健康管理を行うことを求めているのです。つまり、「地域でお互いに助け合って下さい。病気の予防を意識して、自己健康管理をしてください。」と言っているのです。
国策はさておいても、自分から積極的に健康管理を行うことで自身の身体の異常や違和感を早期に感じ取り、早めに医療サービスと求めることが出来ます。そうすることで病気の早期発見・対応につながり、医療費軽減のみならず自分が望むライフスタイル(暮らし方)を自宅・地域で維持することが出来ます。それを実現するには、先ず、日々の暮らしの中で自身の血圧測定、体重測定などを行い、自分の「普通(正常)」を知ることだと思います。
多くのシニアがなりたくない状況として挙げるのが、他の人に依存しなければ暮らせない状況で、認知症、転倒による大怪我などが具体的に挙げられます。 次回からはそれらの予防・改善のヒントについてお話ししたいと思います。