物忘れで、ドキッとすることありませんか?

医療創生大学 スーディ K. 和代

今回は、認知症の兆候のひとつである物忘れと加齢による物忘れの違いをお示ししまし ょう(表 1)。 何の目的でその場所へ来たのかを忘れて慌てることがありますね。 加齢 に加えて、疲労が重なっている時や複数の案件を考えている時などにも起こりやすいです。

表 1.認知症と彼による物忘れの違い

認知症による物忘れ 加齢による物忘れ
原因 病気による加齢による
自覚(病識) 物忘れの自覚がない物忘れの自覚がある
記憶障がい 経験自体を忘れる経験の一部を忘れる
社会生活 営むのが困難支障がない
他の症状 物忘れ以外にも、時間や判断 が不確かとなる物忘れ以外の症状はない

疲労の重なりなど以外にも、認知症と間違いやすい状況があります。例えば、 低体温症、高熱、脱水症、栄養障がい、貧血、感覚障がい、慢性の病気、薬物・毒物、環境 状況等です。 しかし、これらの症状が深刻な場合は「認知症とは関係ない」と無視しない で、医療機関で診てもらいましょう。 認知症ではなくても、高熱、脱水症、栄養障がいな どは別の重篤な健康障がいを起こしている可能性もありますので。

認知症には「軽度認知障がい(MCI)」という症状があることが明らかになっています。 物忘れ以外の著明な症状は見られず、日常生活には大きな影響はないのですが(周囲の理解 とサポートを得て)、これらの軽度認知障がいと診断された人の一部がアルツハイマー病型 の認知症に移行していくといわれています。 移行する率などの軽度認知障がいの詳細に ついては未だ不明な点は多いのが現状です。 しかし、物忘れが頻繁になり、それによりト ラブルが生じるようになったら(あるいは家族や友人からの指摘が複数回にある場合)、か かりつけ医に相談してみると良いでしょう。 単なるうっかりや加齢による症状であるこ とが多いと思います。 また、心身の疲労や他の原因による物忘れかもしれませんが、ひと りで不安を抱えるより、先ずはかかりつけ医に相談して気持ちを軽くしましょう。 仮に認 知症と診断された場合でも、早期診断は重要です。 なぜなら、早期診断により 遅延薬の投与などの対策が早期にとれるからです。 「認知症と診断されたらどうしよう」 という不安や「私は認知症ではない」という根拠のない否定が、平均で約 4 年間の診断遅延 を起こしているといわれています。 症状が重症化しての診断より、早期診断の方がいろい ろな面で有利です。 受診時には信頼できる家族や友人に同行をして貰うと、気持ちも楽に なります。 早期診断を受けることとで、症状が軽い時期を長く維持できます。 つまり認 知症状による多少の不便はありながらも、周囲のサポートを得ながら「生活の質」を保持で きますから。

買い物のときにモノの買い忘れが続くようでしたら、買い物リストを作成して、意識的に 買い忘れがないようにする努力も、脳活性化には必要ですよ!