インフルエンザ予防接種とアルツハイマー病発生率

スーディ K. 和代,PhD CPHQ

皆さんはインフルエンザの予防接種を毎年、受けておられますか?

10 月頃になるとその年のインフルエンザ菌の傾向が話題になり始めます。 深刻な副作 用やアレルギーのためにワクチンを受けられない方も中にはいると思いますが、可能な限 り接種することをお勧めします。 毎年、肺炎で亡くなる人の 95%は 65 歳以上の人たちで あり、残念ながら日本では年間 1 万人の方々が肺炎により死亡しています。 予防接種は それを防ぐ、あるいは重症化を防ぐ有効な手立てのひとつです。 加えて、各自治体では 65 歳以上の人が接種を受けやすいように個人負担金の軽減を図っています。

もう一つ、高齢者にとって大事な予防接種があります。 肺炎球菌ワクチンの予防接種で す。 このワクチンの免疫は5年程度有効であるといわれています。 一度の接種の費用は 7千円以上と高価ではありますが、1 回目の予防接種【65 歳以上】には補助金(現時点では 令和5年まで)が適用されるので個人負担は軽減されます。 生年月日により接種が受けら れる年が決まっていますので、病院や保健所などの掲示に注意を払ってみましょう。 勿論、 かかり医に尋ねても良いでしょう。

行政が肺炎球菌ワクチンの予防接種に力を入れているのには理由があります。 重症化 しやすい肺炎のナンバーワンが肺炎球菌によるものだからです。

さて、これからが今回の本題です。

今年の国際学会で示された研究結果についてです。 複数の国で行われた研究が同じよ うな結果を導き出しています。 それは、毎年、インフルエンザの予防接種を受けている人・ 肺炎球菌予防接種を受けている人のグループとそうではない人のグループではアルツハイ マー病の発生率に差があるということが明らかになったのです。 つまり、定期的にインフ ルエンザの予防接種を受けている人はアルツハイマー病の発生率が低い様だということで す。

これらの研究調査はこれからも継続されていくし、さらに解明されるべき点はあるので すが、大切なことはインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン予防接種は高齢者の肺炎 の重篤化を予防するだけではなく、アルツハイマー病発生率を軽減するというメリットが ある様だということが分かったのです。 予防接種を受けるもう一つの理由が出来たとい うことです。

最後に、認知症リスクを減らす要因について、ライフスタイルが大きく影響していることを過去にお示したと思うのですが、その中の一つである「孤立」について改めて書いておき たいと思います。 新型コロナウイルスによる感染予防のために、家に引きこもることが 多くなっているのではないでしょうか。「孤立」は認知症のリスクを高めます。 電話で、 テレビ電話で、三密と暑さを避けて屋外で散歩しながら知り合いに挨拶をすることで、誰か と少しでもつながっていてください。