第9回 『相槌,共感』
今回は,ユーザに安心感を与え,ユーザとの信頼関係の構築に役立つ相槌,共感について書いてみたいと思います.
人間が対話を行うとき,一方的に自分の話をするのはご法度ですし,相手の話をただただ聞いているだけでも相手に不快感を与えてしまいます.自分と相手がうまい割合で話す,聞くの役割を交代しながらコミュニケーションをとる必要があります.この時の割合は,お互いの関係性や個性などによって変わってきます.対話が弾むための要因の一つとして,この話すと聞くの割合がぴったりと合うということがあろうかと思います.また,話をするタイミングが合うこともまた同じぐらい重要かと思います.
ときに「お話上手は聞き上手」と言われるように,聞く能力は,コミュニケーションにおいては重要になろうかと思います.ただただ聞くだけでは,話し相手は,本当に話を聞いてくれているのか分かりませんし,何かの意図を持って話をされているはずですので,それに対してどう思うのか,どう感じるのか意見して欲しいと思っているはずです.そこでこれらの「聞いています」とか「同じように思います」と言った意思を伝える行動として,相槌と共感があります.
相槌は,相手とのタイミングに同調する行為です.一般的に,相槌には,聞き手の了解を話し手に伝えること,話し手の発話の進行を促す作用があると言われています.首を縦に振るという行動でも示すことができますし,「うん,うん」というような言葉で表現することもできます.ただ,あまり相槌が多いと逆に適当に頷いているだけと捉えられる可能性もありますので,適切なタイミングで相槌を入れる必要があります.不自然なタイミングで相槌を返されると,話し相手は違和感を覚えやすく,むしろ,相槌のないシステムの方が親近感は高くなるとされています.
電話であれば,言葉で相槌を表現するしかありませんが,対面で対話する際には,音声と行動のどちらか,またはその両方を同時に使うことでも表現できます.オンライン会議では,映像で相手が見えることを前提にシステムが作られており,ユーザも自然にそのように感じてしまいます.それにもかかわらず,映像をオフにして音声だけで対話が行われると,それに違和感を感じ,また,顔表情や相槌などの行動からは情報が伝わってこないことから,意思疎通がうまくいかず,理解が進みにくくなることがあるとも言われています.たかが相槌ですが,されど相槌ですね.
共感は,相手の意見に同調する行為です.基本的には,相手の意見を肯定する発言をすることになります.「そうだね」などの発言だけではなく,それに併せて自分の考えや感情を示す自己開示をすることもあります.また,相手に応答を促すために質問をしたり,一般的な情報を提供したりすることも考えられます.ただ,共感として相手の意見に寄り添うべきなのか,またはそれに反する意見をしたり,解決策を提示したり,アドバイスをしたりするべきなのかは,対話相手の意向によるところかと思います.これを適切に判断するのは人間にも難しいことでもあります.この認識の違いによる夫婦でのいざこざも多いかと...
次回は,いろいろ工夫して作成した対話システムがうまく動いているのかをどうすれば評価できるのかについて書いてみたいと思います.