第3回 『人工知能と産業革命』

皆様こんにちは.同志社大学の土屋誠司です.前回は人工知能などの知能について書きましたが,第3回目の今回は,人工知能に至る技術的進歩と産業との関係について書いてみたいと思います.

我々人類は,太古の昔からいろいろな道具を発明して,なるべく快適に効率よく生きる工夫をしてきています.まず初めの大発明は紀元前の『車輪』だと言われています.円形のもので転がして物を移動させるという発想で非常に効率が上がりました.その後,金属や活版印刷などを発明し,1780年ごろの第1次産業革命といわれる蒸気機関に繋がります.いわゆる『機械化』の始まりです.人力ではない大きな力を使った仕組みは長らく続き,約100年後の1870年ごろに第2次産業革命が起こります.蒸気よりも扱いやすい電気を使った機械化です.『電化』は今ではなくてならない仕組みですよね.便利であるが故,停電などで電気が使えないと何もできなくなるのは現代の大きな問題かと思います.人は貪欲な生き物なので,まさかここで満足することはなく,より効率よく,より便利にということで,また約100年後の1970年ごろに第3次産業革命といわれる『自動化』の波が起こりました.自動化ではコンピュータが重宝され,どんどん高度化していく中,人間が一切関与せずとも製品が作れるようにまでになっています.産業革命が起こるたびに,「人間の仕事を奪う」,「失業者が増える」などと大騒ぎになるのは今も昔も変わりません.しかし,現実問題として,本当に仕事は減っていますでしょうか?逆に増えていませんでしょうか?

第3次産業革命の約50年後の2020年には第4次産業革命が起こると言われています.人工知能も活用した産業革命です.人工知能に加えて5Gといわれている第5世代の通信規格によって,無線でも非常に高速に大容量のデータを送受信できるようになります.そこで,ありとあらゆるものをインターネットに接続して,いつでもどこでもだれでも便利に使用できる仕組みへと進化するといわれています.いわゆるIoT(Internet of Things)です.ちなみに,その先には『シンギュラリティ』といわれる人間の能力を人工知能が超える世の中が来て人間を支配するかもしれないなどというような話まで出てきています.

確かに,一時的には,また,一部の職業はなくなるかもしれません.しかし,その仕事を人間は本当に楽しく愛情をもってやっているのでしょうか?嫌々やっていて,できれば誰かに代わって欲しい,できればやりたくない仕事ではありませんか?もしそうであるならば,機械に代わってもらうことは非常にハッピーなことのはずです.その仕事で賃金が得られなくなるのは大変なことですが,違う仕事がいっぱいあります.コンピュータは非常に不器用です.器用で柔軟性のある人間はもっと違う,すべき仕事,しなければならない仕事があるはずです.仕事が生きがいというのは良いですが,何もしなくても,本当に自分のしたいことをして充実して生活することを本当は望んでいるはず.であれば,人工知能を怖がるのではなく,むしろ,そのような環境になった時に,自分が本当にやりたいことは何なのかを見つけることの方が大事な気がします.私も現在,定年後の生活を誠意暗中模索中...

今回はちょっと歴史的なことも扱いましたので,次回は,人工知能の初期の歴史について書いてみたいと思います.

同志社大学 人工知能工学研究センター