第31回 『ディープラーニングとニューラルネットワーク』

皆様こんにちは,同志社大学の土屋誠司です.人工知能の第31回目の今回は,ディープラーニングとニューラルネットワークについて書いてみたいと思います.

人工知能は,人間などの知能をコンピュータでシミュレーションしたものです.つまり,その基となった人間などと同じように,人工知能が学習することともまた可能です.例えば,人間から教えてもらった少しの正しい知識を参考にして,たくさんの情報を使って学習することができます.人間で言うと,先生に教えてもらって勉強するのと同じ方法です.人工知能の場合は,人間が入力した正しい知識が先生(教師)の代わりになります.この学習方法を『教師あり学習』と呼びます.

この『教師あり学習』で最近注目されている方法に『ディープラーニング(Deep Learning)』というものがあります.これは頭の中にある脳の仕組みを真似した方法で,1980年代に開発された『ニューラルネットワーク』という技術をより発展させたものです.脳の中にはたくさんの細胞があります.その一つひとつの細胞は複雑なことはできず,「ON」か「OFF」か,つまり「1」か「0」かしか出力することができません.しかし,その細胞がたくさんあると,たくさんの「ON」と「OFF」がつながりますので,複雑なことをすることができるようになります.

ディープラーニングやニューラルネットワークで学習して賢くなるためには,たくさん正しいことを教え,それらをたくさん覚える必要があります.少ない知識でも学習することはできますが,多い方がより賢くなります.そして,それらの知識を利用して,まだ教えてもらっていないことも正しく判断でき,正しい答えを見つけられるように,しっかり考える必要があります.実際には,正しいと教えてもらったことを正しいと出力できるように,「ON」,「OFF」を切り替えていきます.たくさんの「ON」,「OFF」を切り替えていき,すべての物事に対して,すべて正しい出力ができるまでこの作業を繰り返します.結果として,賢くなっているということになります.

これは,我々人間も同じです.生まれた当初は何も知りませんが,いろんな人からいろんなことを教えてもらって,覚えて,考えて,自分で答えを出せるようになります.頭の中にある細胞がしっかり「ON」,「OFF」を切り替えたのです.

ただこの方法だと,先生(教師)が必ず必要になりますので,人工知能だけで自動的に学習することはできません.そこで,教えてもらった正しい知識を使うのではなく,インターネット上の情報をたくさん集めてきて,みんなの意見を参考に学習する方法があります.この学習方法を『教師なし学習』,特に『ビッグデータの解析』や『データマイニング』と呼びます.みんなが言っていること,やっていることは正しいのではないかと考える方法です.多くの場合,みんなが言うこと,することには偏りが生じます.この偏りを統計処理することで学習していくことになります.

次回は,他の機械学習手法として,強化学習について書いてみたいと思います.