第16回 『人工知能の凄さ』

皆様こんにちは,同志社大学の土屋誠司です.人工知能の第16回目の今回は,人工知能の凄さに書いてみたいと思います.

第三次人工知能ブームで注目されたのは,「大量なデータを扱える」こと,そして「自動的に学習できる」ことかと思います.様々な分野の様々な形で表現された情報を収集し,学習することで,そこから知識やルールを見つけ出すことができます.特に,これまでは,「このような条件なら答えはこれ」,「このデータであればこれが答え」というように,人手で教えてあげる必要がありました.つまり,先生役を人間がやらないと,コンピュータは賢くなりませんでした.このコンピュータに物事を教えるという作業は非常に難しく,コストもかかります.それが,人工知能が一人で勝手に,自動的に学習してくれるようになり,非常に便利になりました.

さらに,最近では,一人で学習するだけではなく,人工知能同士がお互いに勉強し合いながら賢くなる機能も実現されています.例えば,将棋のプログラムであれば,自分と相手の人工知能を用意し,双方が相手に負けないように将棋を指します.将棋というゲームですので双方がどれだけ頑張ってもどちらかが勝ち,どちらかが負けてしまいます.それを何回も何回も繰り返すことで,双方のプログラムが賢くなります.人間でも練習をしながらうまくなるので,人工知能でも同じ過程をとってみようという発想から生まれた方法です.

また,お互いが同じ目的に向かって切磋琢磨するのではなく,相反する目的を持ちながら行動することで賢くなる方法も実現されています.例えば,偽札を見つけるプログラムと偽札を作るプログラムを用意し,双方を競争させます.偽札を見つけるプログラムは,巧妙に作られた偽札を決して逃さないようにチェックします.一方,偽札を作るプログラムは,偽札だと気づかれることのないように,より巧妙な偽札を作ろうとします.これを何回も何回も繰り返すことで,偽札を絶対に見つけることができるプログラムを作ることできます.

ここで重要なのは,決して,偽札を作るプログラムの方を現実社会で使用しないようにしなければならないということです.これは,前回の人工知能の第16回,人工知能の怖さに通ずるところがあります.もし,戦争をする人工知能搭載兵器を作ろうとしたら...上記のような訓練を繰り返せば,物凄い兵器を作り出せることにもなります.しかし,そうではなく,例えば,自動運転のように人々が安心,安全に生活できるための手助けをしてくれたり,自然災害から身を守ることができるような仕組みの一躍を担ってくれたりと,人類にとって有益な方向で発展していって欲しいと思います.

自動的に勝手に学習してくれるのだから,何でもできると思いがちですが,やはり人工知能にもまだまだ解決しなければならない問題がたくさんあります.そこで次回は,人工知能の基本的な問題点について書いてみたいと思います.