第4回 『人工知能の歴史 ‐第一次人工知能ブーム‐』
皆様こんにちは、同志社大学の土屋誠司です.第4回目の今回は,人工知能の歴史として第一次人工知能ブームについて書いてみたいと思います.
現在の人工知能ブームは,実は3回目になります.では,「1回目の人工知能ブームは?」というと1960年代前後に遡ります.1960年代前後はコンピュータにとっては重要な技術的発展があった時期になります.そもそもコンピュータ(ここでいうコンピュータはディジタルコンピュータ)は,1946年に発表されました.たった70年ほど前の話です.その約20年後の1969年に,現在のインターネットの前身であるARPANETというものの運用が開始されています.インターネットが我々の周りで広く普及したと言われるのが1995年ですから,25年程度で,なくてならない技術にまでになったということになります.非常に速いですよね.ちなみに,電話が普及するのに約100年かかったことからもその普及の速さの凄まじさは実感できるかと思います.
では,「人工知能は?」というと,1956年にダートマス会議という研究発表会で初めて命名されました.なんとコンピュータが発表されてからたった10年後の話です.お偉い方々の考えておられること,頭の中は凄いですね.非常に簡単なことしかできなかったコンピュータを見て,「これで人工知能を作れるはずだ」と考えられる.普通の人は誰も想像できなかったと思います.将来,未来を想像,創造できる力があるからこそであり,そのような考えがあるからこそ,本当にそのような世界がやってくるのだと感動します.
実際に,第一次人工知能ブームが来たのは,人工知能という言葉ができてから約10年後ということになります.当時は,いろいろな組み合わせの中から答えを見つけ出す『探索』という技術と「鳩は鳥だ」,「鳥は飛ぶ」だから「鳩は飛ぶ」と判断したり,「鳩は鳥で飛ぶ」,「カラスも鳥で飛ぶ」ということから「鳥は飛ぶ」と判断したりする,いわゆる『推論』という技術の2つの技術が注目されました.それまでのコンピュータは指示したことしかできなかったことから,非常に画期的であり,明るい未来を感じたと言われています.
しかし,「流行物は廃り物」.やはりブームは去ってしまいます.1970年代後半にはすっかりブームは去ってしまいました.こんなに未来が見えるような技術だったのになぜか?それは,扱える問題が非常に限定的だったからです.実験室ではできる,または子供を対象にした非常に簡単なゲーム的なものには使えたけれども,実際我々が直面する複雑な問題には一切使えなかったのが原因です.
研究者や技術者は,ついつい自分のやったことを大きく宣伝しがちです.まぁ,非常に多くの時間と費用を使って作り出したものなので仕方がないのかもしれません.これは昔も今も残念ながら変わりません.パンフレットやCMなどでは,やはり良いことばかりをキラキラと誇張して表現していますよね.我々はそんな広告に踊らされることなく,良いことも悪いことも含めて真実をうまく掴んで対応する必要があるのだと思います.
今回の第一次人工知能ブームに関連して,次回は,その時に議論になった知能があるということの判断の仕方について書いてみたいと思います.