第23回 『人間がすべきこと』

皆様こんにちは,同志社大学の土屋誠司です.人工知能の第23回目の今回は,人間がすべきことについて書いてみたいと思います.

人間と人工知能が共存するようになるとして,では,人間は何をすべきなのか,人間はどうあるべきなのか.非常に大きく,重い話だと思います.人工知能は今後もできることがどんどん増える方向で進化していくと思います.以前にこのブログで書いた言葉で言えば『閉世界』の技術を『開世界』で活用できるように進化していくはずです.つまり,ある限られた環境,すべてが想定された環境下だけでなく,どんな環境でも,どんな想定外に直面しても対処できるようになっていくと思います.

一方,人間はどうでしょうか?コンビニやレストランでもそうですが,かなりマニュアルが整備され,素人でも玄人のように対応できるようになってきています.それは悪いことだけではありませんが,度が過ぎるとマニュアルにないことは一切しない,一切できない人になってしまいます.すでにそのような兆候が出てきているような気がします.いわゆる,単一化の方向ですので,『開世界』ではなくすべてを想定している『閉世界』にしようとしているようにも見えます.本当にそれで良いのでしょうか?また,そのようにできるものなのでしょうか?

「人間のようなロボット」という比喩を考えると「賢い」というプラスのイメージが沸くと思います.逆に,全く同じ単語を使った「ロボットのような人間」というと,今度は「冷たい」,「融通が利かない」などのマイナスなイメージが沸いてくると思います.全く同じ単語を使っているにもかかわらず,単に順番が違うだけでこれだけ表現していることが異なります.言葉って面白いですよね.でも,この解釈は今現在のモノです.言葉は生き物ですので意味や表現はどんどん変化していきます.今後,このままもっと時代が進んでしまうと「ロボットのような人間」は「すごい」なんて意味になっていってしまうかもしれません.「青は藍より出でて藍より青し」かもしれませんが...

こうならないように,我々人間がちゃんと『人間』をしなくてはなりません.皆さんはちゃんと毎日『人間』をできていますでしょうか?例えば,起床して,出勤して,仕事して,昼ご飯を食べて,仕事して,帰宅して,寝る,そしてまた起床して,出勤して・・・それだけになっていませんか?あまりの忙しさに「人間のような生活がしたい」なんて言っていませんか?人工知能の研究をしていると技術のことだけでなく,人間について考えることが多くなります.なんせ人工知能のお手本は人間自身なのですから.人間が人間らしくいれる世の中として進化していって欲しいと思います.

次回からは,少し技術的なお話をしていきたいと思います.まず初回として,第二次人工知能ブームの時に注目されたエキスパートシステムについて書いてみたいと思います.