第17回 『人工知能の基本的な問題点』

皆様こんにちは.人工知能の第17回目の今回は,人工知能の基本的な問題点について書いてみたいと思います.

人工知能のことを考えるときに,昔から現代までずっと問題になっているものに『フレーム問題』というものがあります.これは,今からしようとしていることに関係のある事柄だけを選び出すということが実は非常に難しいという問題です.例えば,レストランでお客様に料理を提供するということを考えると,料理を運ぶ時にしなければならないことは,

・作った料理を厨房から貰う

・その料理を注文したお客様を確認する

・そのお客様のところに持っていく

・お客様の前にその料理を置く

というようなことをしなければなりません.しかし,レストランとして,これだけのサービスで良いのでしょうか?本来であれば,注文を聞いたり,お客様の要望に応えたり,お客様と雑談をしたり,片付けや準備をしたりと様々なことを行わなければ,お店としては成り立ちませんよね.その中から,今やるべきことを判断し,上記の4つだけを選択するのは実は非常に難しい問題になります.

また,それだけではなく,お客様に料理を運ぶときにこぼれないか,お客様の前に料理を置く時にお皿は割れないか,はたまた,料理を置いたテーブルは壊れないかなど,普段我々は何気に,無意識のうちにこなしているこれらの様々な関連することを考えなければ実はコンピュータは行動することができません.これを『波及問題』と呼びます.我々人間は『常識』を使い,たくさんある状況や情報をうまく割愛することでこのような問題に対処しているのだと思います.この『常識』をコンピュータに教えることは非常に難しい問題でもあります.ちなみに,私の研究室ではもう25年近くこの『常識』をテーマに研究を行っておりますが,非常に奥深いものだと日々痛感しています.うまく割愛しなければ,多くのことを考えなければならなくなり,結果として,コンピュータは動けなくなってしまいます.

さらに,『限定問題』というものもあります.これは,前提条件をうまく絞り切れないという問題です.先の例だと「温かいうちにお料理を運んでね」と言われたとき,「温かい」とはどういうことなのかということです.30度なのか?98度なのか?それは,お料理によって異なることであり,また,○○度とピッタリの数字で表現できるものでもありません.しかし,我々がなんとなく共通認識を持っていることであることも確かです.このような曖昧なことをコンピュータで実現することは非常に難しい問題になります.

なぜ難しいのか?それは,すべてのことを記憶させれば良いのかもしれませんが,あまりに多くの情報を記憶させる必要があり,またコストもかかることから現実的ではありません.そのため,想像したり連想したりする必要が出てきますが,そのようなことは現状のコンピュータでは非常に難しいことになります.しかし今後,人間とロボットが共存するためには,このような『常識』をしっかり持ったコンピュータは必要不可欠だと思います.我々の研究室もその時に一躍を担えるよう精進していきたいと思っております.

次回は,人工知能の技術的な問題点について書いてみたいと思います.