第8回 『人工知能と社会革命』

 皆様こんにちは,同志社大学の土屋誠司です.前回までに人工知能の歴史を辿りましたので,第8回目の今回は,人工知能につながる社会的な大きな変革について書いてみたいと思います.

 我々人類も他の生物と同じく,生きていかねばなりません.そのためには,食べるものを確保する必要があります.そこで,太古の昔は,食べるものを取って生活する『狩猟』を行っていました.現在で残っている『狩猟』としては漁業の一部などでしょうか.野山に自生している植物も,今では食べられるものと食べられないものを先人の知識として共有されていますが,初めの人は命がけだったことだと思います.キノコなどは毒性の強いものも多いですので,多くの方の犠牲の基に獲得できた知識です.また,動物を狩るとなると,それこそ命がけです.初めは素手で行っていた『狩猟』も,「安全性」や「効率性」を求めた結果として,弓矢や石器という道具を生み出していきました.
 その後,より確実に安心して食料を確保するために,自分たちで食べ物を育てること,いわゆる『農業』を考えました.現在でも農業・畜産は重要な産業ですし,漁業でも養殖技術はなくてはならないものになっています.自分たちで育てるという発想は我々人類の成り立ちで非常に画期的な転換点であり『農業革命』と呼ばれたりします.ここでは,「安全」,「効率」というキーワードに産業化ならではの概念である「安価」であることも必要となり,大規模に事業を行う産業社会に突入します.安定して生産することを考えると,灌漑事業が重要になり,また,農工具の開発も活発になりました.より高度な仕組みで,より大きな力で動くものが必要になり,いわゆる『産業革命』に繋がっていきます.
 『産業革命』では,ご存知のように蒸気機関などを代表とする動力や機械の発明により,工業社会が形成されました.人々の生活は非常に便利になった一方で,これまでの仕事がなくなり,失業した人が出てきたのもまた事実です.物事は常に表裏一体,光があれば影ができます.バランスをうまくとり,自分たちが作り出した仕組みや道具をうまく使いこなす必要があるのだと思います.大量生産をし,非常に安価にいつでもいろいろなものを手に入れることができるようになりましたが,せっかく作ったものも大量に作りすぎたせいで廃棄しなければならなかったり,廃棄のことを考えて結局値段に転嫁されていたり...しかも,廃棄の過程で自然環境を破壊していたり...心の痛む状況ではあるものの,その恩恵を受け続けているのもまた否定できませんが...
その後,動力も蒸気から電気に代わり,ますます工業化,自動化は進んでいきます.現在は,『情報革命』が起こっていると言われており,インターネットやコンピュータはなくてはならないものとなっています.そして,今流行の人工知能.これらの技術も弓矢や石器などと同じく,あくまで単なる道具です.人類はしっかりと使いこなす必要があり,それが最も重要だと思います.おそらく,『情報革命』のその先も人類は見つけていくのだと思います.是非,人類は本当の意味で豊かになれる,これまでのことを反省した革命を起こして欲しいと思いながら...

 次回は,温故知新という言葉をキーワードに書いてみたいと思います.

同志社大学人工知能工学研究センター